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ホームイベントシンポジウム METI-RIETI政策シンポジウム グローバル企業のグループガバナンス:企業価値の向上に向けて(議事概要) 印刷 開催案内 配付資料・動画配信 議事概要 イベント概要 日時:2019年9月2日(月)13:30-17:20 会場:イイノホール&カンファレンスセンター(東京都千代田区内幸町2丁目1-1) 主催:経済産業省(METI)・独立行政法人経済産業研究所(RIETI) 近年、第4次産業革命による産業構造の急激な変化や少子高齢化などによる国内市場の縮小に伴い、グローバル企業には積極的な事業ポートフォリオマネジメントや実効的な子会社管理がいっそう求められている。こうした問題を背景として、経済産業省ではコーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会が1年半にわたる議論を重ね、2019年6月に「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)を策定・公表した。本シンポジウムではその内容を踏まえ、各界を代表する研究者、実務家、弁護士、行政官などの本分野に精通したパネリストが、中長期の企業価値向上と持続的な成長に向けたグループガバナンスの在り方について議論した。 議事概要 開会挨拶 中島 厚志(RIETI理事長) 経済のグローバル化が進展する中、グローバル企業には積極的な事業ポートフォリオマネジメントや実効的な子会社管理が従来以上に求められています。日本企業も企業買収や子会社設立によるグループ化が進んでいますが、そのガバナンスや価値創造は欧米企業と比べてなお十分ではありません。 本日のシンポジウムは、私どもが2017年から進めてきた「企業統治分析のフロンティア」プロジェクトの研究成果と、2019年6月に経済産業省が公表した「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(グループガイドライン)を踏まえた形で行います。本日の議論が皆さまのご知見にプラスになるものと確信しておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 講演1「成長戦略と企業ガバナンスについて」 新原 浩朗(経済産業省経済産業政策局長) 日本企業と海外企業の比較 最近、かつての日本企業のお株が海外企業に奪われつつあるように感じます。Amazonに代表されるように、米国の大企業は失敗することに対してとても果敢であり、長期で新しい企業価値をつくることに極めてポジティブです。ですから、第4次産業革命において新しいものを生み出す風土をつくることが企業ガバナンスの課題だと考えます。 日本ではかなり需要面は強化されましたが、供給面は強化されていません。労働生産性も欧米にはまだ追い付いていません。生産性を上げるためにはコストを抑制しなければならないと考えがちですが、生産性は売値-コストですから、生産性が低いときにはコストが高い場合と売値が低い場合の両方から見ていかなくてはいけません。 マークアップ率の推移から そこで出てくるのがマークアップ率という概念です。分母をコスト、分子を販売価格として、コストの何倍の価格で売れているのかを見るものです。2010年以降、欧米企業はマークアップ率を向上させています。 1980年と2016年の米国企業のマークアップ率の分布を比較すると、マークアップ率が低い企業が減少し、高い企業が現れています。最初に思い浮かぶのはプラットフォーム企業かもしれませんが、OECDのデータから米国のデータを抜いても分布はほとんど変わりません。 ところが、日本企業の場合は1980年と2016年の分布がほぼ変わっていません。つまり技術的なものではなく、付加価値の高い製品・サービスを生み出す力や、モノを開発していく力が戦後の日本企業の強みだったはずなのに、それが衰えていると考えられるのです。 副業について もう1つ確認しておかなければならないのは人材の問題です。第4次産業革命は労働市場の構造にも影響を与え、「分極化」が起こっています。米国では介護・対個人サービス・清掃・警備といった低スキルと、技術・専門職などの高スキル層が伸び、製造・事務・販売といったホワイトカラーの典型的な部分(中スキル)が減っています。日本でも同じようなことが早晩起きるといわれています。また、米国では第4次産業革命によって、修士課程卒の生涯賃金が博士課程卒に比べて上がっています。 つまり、第4次産業革命で人工知能(AI)が出てくると、人間は人間であることが強く要求されるわけです。リプレースされて職がなくなるのではなく、人間的でないことがAIに押し付けられるのです。そうすると、基礎的・本質的な分野や人間の感性や感覚に根差した分野が市場化されていきます。 では、新しいモノを創造する人はどんな人かというと、marginal man(境界人)だと思います。社内で価値をつくる人を育てるには、企業内部で他のカルチャーに接する人をできるだけつくっていくことが重要かもしれません。これに関連して副業についての議論が当然起こってきます。 日本における副業はまだそれほど多くありませんが、副業をすることで本業に対する意識が高まったという人は2割程度いるというデータもありますし、高度人材で兼職をしていない人よりも兼職している人の方が、本業の賃金が36%高くなっているというデータもあります。ですから、そうした人を評価していることは明らかです。ベンチャーについても、実は兼職で起こした人が65%程度いて、前職を辞めて初めて起こす人は多くありません。 もう1つ注視しておくべきはオープンイノベーションです。データを見ると、日本企業のオープンイノベーション実施率は欧米企業に対して低いのですが、大学・公的研究機関とのジョイントはそれほど遜色がありません。 しかし、起業家・スタートアップ企業とのジョイントや既存企業同士の協働は、欧米企業と比較すると日本企業の方が明らかに少ないです。この点は新しい価値をつくることと強く絡むので、われわれとしてはここをステップとして成長戦略に結び付けていきたいと思っています。 講演2「グローバル企業のグループガバナンス:企業価値の向上に向けて」 宮島 英昭 (RIETIファカルティフェロー / 早稲田大学商学学術院教授・早稲田大学常任理事・早稲田大学高等研究所顧問) グループガバナンスの問題点 2000年代以降、日本企業のグループ化は著しく進展しています。背景には日本企業のグローバル化の進展と海外グループ企業の増加がありますが、そのグループの経営自体は必ずしも十分な成果を上げていません。日本企業のグループガバナンスには5つの重要な問題があると考えられます。 第一に、グローバル企業の収益性が国際的に見て低いことです。第二に、事業再組織化が遅れていることです。その結果、全体的な収益の低下が起きていると考えられます。第三に、クロスボーダーM&Aによる大型合併が必ずしも収益を生まず、一部には減損を計上していることです。第四に、内部統制の不備のために不祥事が発生し、親会社のリプテーション(評価)リスクを高める事例が散見されるようになりました。第五に、最近は上場子会社で、特に親会社と子会社との間や株主との間のきしみが目立っています。 こうした背景の下、経済産業省では2017年からコーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会を開催し、その成果が「グループガバナンスに関する実務指針」として提示されました。 グループ設計の問題 グループ設計の在り方に関しては近年、純粋持ち株会社が急速に増えていますが、どのタイプの企業が純粋持ち株会社を選択し、どのタイプの企業が事業持ち株会社のままグループ化するのかというのは大きな問題です。仮説として、事業を急速に入れ替える必要がある、あるいは、財務面のシナジーが期待できる企業は純粋持ち株会社を選択するのに対し、技術、製品開発などの事業面のシナジーが期待できる産業では事業持ち株会社の方が相性がいいと考えられています。 指針では、グループ設計の問題を解決するために4点を提案しています。1点目に、財務的シナジーと事業的シナジーの最適なガバナンスを考えることです。2点目に、法人格のメリットについて検討することが重要です。3点目に、分権化(権限移譲)と集権化(本社によるコントロール)のバランスの最適化を図ることです。4点目に、日本企業は分権化を進めつつあるのですが、分権化を進めた後に各単位が独立化してシナジー効果が失われているので、本社(コーポレート)の機能を強化することです。 事業ポートフォリオマネジメントの問題 事業ポートフォリオマネジメントに関しては、多角化の方向が強まっていますが、依然として国際的収益性が低いことはかなりはっきりしています。日本企業は多角化・大規模化するほど収益性が悪化しているのです。 そこで指針では、コア事業を見極めること。各事業の潜在力を発揮させる「ベストオーナー」は誰かという視点が重要であること。本社の取締役会が主導的な役割を果たす必要があること。外部取締役が事業ポートフォリオの最適化に主体的に関与することが必要であること、を提言しています。 また、事業ポートフォリオの組み替えに関しては、そのインフラとして事業評価のための財務的な基盤整理が不可欠であり、資本コストなどが設定できる仕組みが必要であること。こうした仕組みを最終的に実行するには、最高経営責任者(CEO)が重要な役割を担うことを強調しています。 上場子会社に関するガバナンスの問題 上場子会社のガバナンスに関しては近年、親子上場が非常に大きな問題となっています。親子上場には2つのルートがあって、以前は事業部門をカーブアウトして設立するケースが多かったのですが、2000年代以降はM&Aで上場子会社になるケースが多くなっています。そうすると設立の経緯で利益相反の構造がやや異なってきます。 指針では次の3点を提案しています。1点目に、上場子会社は不安定な存在なので、その存在理由や合理性を定期的に点検することです。2点目に、上場子会社は独立取締役が親会社の方を向いてはいけないので、独立社外取締役の要件を厳格化することです。3点目に、上場子会社はガバナンス体制として通常の上場企業よりも厳しいものを基準とする必要があるので、独立取締役を3分の1や過半数以上にすることです。 第1部「グローバル企業の事業ポートフォリオ戦略」 モデレータ 宮島 英昭 (RIETIファカルティフェロー / 早稲田大学商学学術院教授・早稲田大学常任理事・早稲田大学高等研究所顧問) パネリスト 上田 亮子(株式会社日本投資環境研究所主任研究員) 小口 正範(三菱重工業株式会社取締役副社長執行役員CFO) 冨山 和彦(株式会社経営共創基盤代表取締役CEO) 中村 豊明(株式会社日立製作所取締役) プレゼンテーション 宮島: 小口さん、冨山さん、中村さんは、第2期コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会の委員であり、ガイドラインの作成に大きく貢献されました。上田さんには投資家の立場からのご意見を頂けると期待しています。 小口: 当社は、体制・プロセス・ガバナンスの3つの観点から経営改革を進めてきました。まず体制という意味では工場中心の経営からビジネスユニット中心の経営体制へと変えてきました。またビジネスユニットの経営状況を把握するために、経営プロセスとして戦略的事業評価制度の導入、キャッシュフロー重視の経営、また事業軸に対して管理軸を通すことによりガバナンスを高度化するためにチーフオフィサー制度などを導入しました。 ビジネスユニットの評価は当然事業ポートフォリオの最適化に関係します。各事業の寿命を認識し、クライマックスにある事業を発展させ、寿命が尽きつつある事業からリソースを抜き、新たな事業を生み出していく、というサイクルをうまく回していくことがポートフォリオ・マネジメントの根本です。当社では、財務健全性と事業の発展性を軸にしたマトリックスに全事業をプロットして評価しています。 また、経営管理指標は非常に重要です。従来は損益計算書(PL)を重視していましたが、PLだけでは経営改革にはつながりません。経営の課題を発見し、改善していくという観点からキャッシュフロー、バランスシートの改善に目を向けたことも大きなポイントです。 最近は事業を包括的に評価する目的でTOPという新しい指標を導入しました。これは売上、総資産、時価総額が1:1:1の関係になっているときが、もっともバランスの取れた良い状況を表すというものです。売上高は顧客による評価、時価総額は投資家による評価とも言えますが、自らの資産を如何に最大限活用して、顧客(事業市場)や投資家(資本市場)から良い評価を得ることができているかを認識することで、経営上の課題を明らかにしてゆこうというものです。当社は残念ながらバランスが崩れており、もう一段の経営改革が必要だと考えています。 中村: 当社は、事業の構造改革が後手に回り、成長戦略が有効に行われなかったため、赤字を何度も経験しました。そのため、先送りにしないコーポレート・ガバナンスが必要だと考えました。 2009年以降、社会インフラ分野へのシフトとIT事業への投資強化を進めました。2021中期経営計画では社会イノベーション事業でグローバルリーダーになることを目指しています。 日立の先進的なデジタル技術基盤であるLumadaをベースとするソリューションでお客さまの社会価値・環境価値・経済価値を同時に上げ、人々のクオリティ・オブ・ライフ(QoL)と顧客企業の価値の向上を目指しています。そのために2019年度、破壊的な技術等を持つスタートアップとの協創を図るためにコーポレート・ベンチャリング・ファンドの新会社を設立し、また顧客やパートナーとの協創を築き上げる「協創の森」をつくりました。顧客・スタートアップ・パートナーが協創し、Lumadaでソリューションコア群を創出することで、1兆円規模のサービスを提供しています。 成長戦略の実行には、資本コストを意識した経営が求められます。そこで、各事業部門に投下資本利益率(ROIC)を導入しました。これにより、事業ポートフォリオの最適化、収益性の低い事業の改革も行いながら、選択と集中を進めています。 冨山: 今は激しい破壊的イノベーションが起きる時代となり、事業ポートフォリオの入れ替えがすごい勢いで行われるようになりました。そのときに、チャールズ・A. オライリー とマイケル・L. タッシュマンによる書籍『両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』でも指摘されているように、現在持っているコア事業を強化していくことと、新しいタイプの事業を取り込むことの両方が重要です。 しかし、新しいタイプの事業を取り込むには、いろいろな面で異質なものを取り込むことになるので、「イノベーションのジレンマ」が起きます。今どきの事業ポートフォリオ経営は、量的な意味での入れ替えと同時に、質的な意味で異質なものも取り込まなければならないという難しさを抱えているのです。 ガバナンスの問題としては、そういったことができるようなトップをボードは選んでいかなければなりません。それも1回きりではなく、経営は続いていくので、次の世代でもそうした人を選ばなければなりません。ポートフォリオ戦略を持続的に機能させようと思うと、ガバナンスにかなり本気で手を入れて質を高めていかないと、「両利きの経営」は簡単ではないのです。私の問題意識としては、今の時代の事業ポートフォリオ経営の根幹はガバナンス改革にあると思っています。 上田: グローバル企業グループが価値を創造するには、有機的かつ効率的なグループ経営を通じて、将来期待される企業価値が向上すればいいわけです。投資家・市場がそうした期待を持てば、コングロマリット・ディスカウント(複合企業の価値が各事業の価値の合計よりも小さい状態)は乗り越えられると思います。しかし、特に日本企業は、会社の方向性や価値観、ビジネスモデルに一貫したストーリーが見えません。 特に日本企業の事業ポートフォリオの見直しにおいて、課題は4点あると思っています。1点目に、会社の伝統事業から次の新しいイノベーションを起こせるかということです。2点目に、現在価値を生む事業について、どれだけのタイムホライズンで、どこまで依拠するかということです。3点目に、特に短期主義の投資家は2~3年もうかればよく、長期のR&Dやイノベーションには興味がないので、そのギャップを対話で埋めることが必要です。4点目に、将来価値を生む事業についてもその方向性と戦略が整合しているかを考える必要があります。このような観点で、対話を通じたグループ経営が問われていると思います。 ディスカッション 宮島: 日本企業は事業ポートフォリオの組み換えやスピンオフ戦略等に関してどんな問題を抱えていますか。 冨山: 大企業が新陳代謝するには、ベンチャー的空間も含めた新陳代謝が国内外で起きなければなりませんし、多様性、非連続性、流動性に耐えられる企業体をつくらなければなりません。そうであるならば、少なくともボードが変わらなければ駄目です。しかし多くの場合、日本企業の同一性・連続性の代名詞になっているようなボードが少なくありません。 上田: スピンオフも事業ポートフォリオの見直しも、まずストーリーがなければ投資家は判断のしようがありません。しかし、ストーリーは基本的に企業の経営者しか分からないものなので、まずは企業側がストーリーをしっかりつくり、企業の価値観が示され、戦略に落とし込むことが求められます。 宮島: 上場子会社のガバナンスの問題についての考えをお聞きします。 中村: 親子上場の意義はお互いに企業価値の持続的向上が実現できているかどうかだと思います。このためには、内部統制システムが機能していることが大切です。よって、日立ではまず、上場子会社のトップに監査委員が行って面談し、方向感をチェックしています。成長を実現していけるかどうかということは予算や中計でも議論しますがそれは執行側の問題で、それも踏まえて取締役会でもその戦略が合っているかというチェックを行っています。 小口: 現在は、個社というよりは企業集団全体として価値を高めてゆくことが経営の根本にあります。その意味から親子上場を考えたとき、現状に少し違和感を覚えます。例えば、自分の事業をスピンアウトしてうまく成長するまでの期間は面倒を見る、或いは、必要なものを買ってきて自分の中に取り込むまでの猶予期間を置く、というような場合には理解できるのですが、親子上場を長期間継続しつつ企業集団を形成するというのは、中に自己矛盾を抱えているようなもので、企業価値の向上に資するものではないように思います。 第2部「グローバル企業の子会社管理」 モデレータ 宮島 英昭 (RIETIファカルティフェロー / 早稲田大学商学学術院教授・早稲田大学常任理事・早稲田大学高等研究所顧問) パネリスト 澤口 実(森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士) 藤原 謙(三菱ケミカルホールディングス取締役・執行役常務・コンプライアンス推進統括執行役) 松田 千恵子(首都大学東京大学院経営学研究科教授・首都大学東京経済経営学部教授) 坂本 里和(経済産業省経済産業政策局産業組織課長) プレゼンテーション 宮島: 海外子会社の増大に関して非常に重要な意味を持ったのがクロスボーダーM&Aです。しかし、すべての上場企業がクロスボーダーM&Aを試みたわけではなく、M&Aで成長を実現した先進企業と着手し始めた企業、M&Aを検討しながらもまだ行っていない企業が併存しています。 そこで我が国企業による海外M&A研究会では、成功のパターンや失敗の共通項を引き出して、M&Aに取り組む企業に知見を普及することを目指しました。ポイントは1つ目に、周到な事前準備と買収を契機としたグローバル成長の実現です。そのためには事前準備とポストM&Aの体制整備が不可欠であり、その要件が提案されています。2つ目に、M&A成功の3要素として戦略ストーリーの構想力、個別案件の実行力、グローバル経営力を併せ持ち、トップの強いコミットメントが重要であると指摘しています。 それらを基に「海外M&Aを経営に活用する場合の9つの行動」を策定し、M&Aの各局面に合わせて具体的なチェックポイントを提案する構成になっています。 澤口: ガイドラインでは、親会社取締役会の責務に関して、法律家からみると、一歩踏み込んだ記載がなされました。にもかかわらず、研究会の中でそこが侃々諤々の議論になったことはありませんでした。いままで法律の世界では、子会社の債権者などに対して親会社が法的責任を負わないことを重視してやってきました。 一方で、法律の世界を離れると、経営ははるか昔から子会社管理をしており、連結経営はすでに定着しています。それだけでなく、最近はレピュテーションの観点で、子会社で発生した不祥事によって親会社の経営陣の責任が厳しく問われます。また、法的にもグループ全体にリスクが及ぶことが珍しくなくなっています。今は子会社を管理しないこと自体がリスクだと一般的に認識されてきたのではないでしょうか。そうしたことが今回のグループガイドラインの議論にも表れてきたと思います。遅れていた法律分野が経営実態にキャッチアップしてきた側面があるという印象を持ちました。 松田: グローバルグループの本社は、投資家に対するガバナンスの受け手の役割だけでなく、グループ内のガバナンスの担い手となることが必要です。つまり、グループガバナンスは親会社の問題が大きいということになります。 グループガバナンスの担い手として考えるべきことは、1つ目に、信頼に至る経営者を選んでいるかということです。2つ目に、グループガバナンスであっても「指名」「報酬」「監査」の仕組みが機能しているかということです。そして3つ目に、本当に利益相反に敏感になっているかということです。グループ内では海外事業推進部などが事業推進とモニタリングを両方やっていることがあり、「お手盛り」になっている可能性があります。4つ目に、リスクマネジメントや内部統制は有効かということです。5つ目に、日本企業は意外とボックス&ラインズに気を使っていないように思います。このあたりが非常に曖昧模糊としているので、逆に海外で買われた企業のトップや外国人の不満が圧倒的に大きくなっています。 藤原: 私どもでは、100%子会社の社長の選任・解任、報酬については、持ち株会社の指名報酬委員会で決めています。一方、上場子会社については、独立性確保の観点から、指名報酬委員会のマターにはしていません。 そうした中で、私どもは資本効率を重視する経営、イノベーションの創出を追求する技術経営、サステナビリティの向上を目指す経営という3つの軸を企業価値と考えています。それから、ファイナンスの部門とビジネス部門との意思の疎通がよく図れる体制になっていますが、これは、過去にはオイルショックで大きな赤字が出たという経験があることから、経理財務的な観点からの経営管理は以前から縛りがかなりきつくなっています。それから、経営陣のガバナンスを働かせることについても、特に上場子会社に関してはいろいろ考えなければならないことがあります。 坂本: 子会社の経営陣に対する指名と報酬に関して、今回のガイドラインで提言しているポイントは、子会社には日々の事業の執行は任せつつ、どこでグリップしていくかという点で、子会社経営陣の指名と報酬がグリップの要として非常に重要になるということです。 ですから、主要子会社の経営トップの指名や報酬についても、親会社の指名報酬委員会で審議することが有効だと思います。それから、海外子会社のCEO職を、グループ全体としての後継者計画の一環として活用することは有効だと思います。報酬についても、グループ全体の経営戦略から、上から下にブレークダウンする形で政策をつくることが重要です。 ただ、M&Aで海外子会社を取り込んだ場合、海外子会社の経営トップと国内の親会社のトップの報酬水準が逆転してしまう現象がよく指摘されます。現実的には、一定レベル以上の役職についてはジョブグレード制を用いて、各職務の定義を統一化した上で、各地域のマーケットの相場に合わせた競争力のある水準を設定することが求められます。他方、中長期的にはグローバルな報酬水準も統一していく必要があるでしょう。 ディスカッション 藤原: 海外子会社の報酬の問題に関しては、部門長(常務執行役員クラス)のグレードをグローバルに統一することにより、逆転現象が起きない形になっています。 松田: 海外子会社の指名報酬制度は、可能な限りグループ内で統一感を持たせるべきです。報酬に関しても日本企業は、逆転現象で高い報酬を得た後の結果評価が非常に甘いように思います。きちんと信賞必罰で臨むことが重要でしょう。 坂本: 内部統制システムの在り方に関しては、事業・管理・内部監査3部門による3線ディフェンスが重要であり、監査役等にも直接のレポートラインを確保することが求められます。 澤口: 日本の内部監査部門の喫緊の課題は、CEOとの関係を見直すことよりも、取締役会や監査役会との関係を強化することだと思います。 坂本: 有事の対応に関しては、企業価値を守ることが大きな目的なので、リプテーションの下降を早く反転させることが重要であり、早めの第一報が重要であるとガイドラインでも提言しています。 松田: 有事対応においては、取締役会で出た案件に関するリスクをきちんと理解すること、迅速な情報共有、ボードの多様性が重要だと思います。 宮島: グループガバナンスは今後もその重要性を増し、指針では丹念なヒアリングと調査を基に多くの提案をしています。この指針が今後のグループガバナンスに関して有益な示唆を与えると信じています。 イベント シンポジウム ワークショップ BBLセミナー 終了したセミナーシリーズ 情報発信 ニュースレター 更新情報RSS配信 Facebook X YouTube 研究テーマ プログラム (2024-2028年度) プログラム (2020-2023年度) プログラム (2016-2019年度) プログラム (2011-2015年度) 政策研究領域 (2006-2010年度) 経済産業省共同プロジェクト 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