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ホームイベントBBLセミナー2017年度 内外経済と金融政策:低金利はいつまで続くのか 印刷 開催日 2017年10月4日 スピーカー 門間 一夫(みずほ総合研究所株式会社エグゼクティブエコノミスト) モデレータ 田代 毅 (RIETIコンサルティングフェロー/経済産業省経済産業政策局調査課課長補佐) ダウンロード/関連リンク プレゼンテーション資料 [PDF:751KB] 開催言語 日本語 議事録 世界経済好調の背景 結論から言ってしまうと、今日、私がお伝えしたいのは「低金利はいつまでも続く」ということなのですが、なぜそう考えるのか、内外の経済情勢を短期、中長期の視点で見ながらお話しします。 2017〜2018年の世界経済は比較的高成長となる見込みですが、新たな高成長局面が始まるわけではなく、あくまで循環的な好調局面の色彩が濃いと考えています。それは、今の世界経済がなぜ好調なのかを考えてみれば分かります。 第1に、中国が重要なドライバーであることです。中国は2015年夏に株価が暴落し、同年後半から2016年初めにかけて元安、資本流出が続きました。中国当局はその混乱を収めるために資本規制をし、為替のコントロールを強め、景気面でもインフラ投資を進めました。その結果、安定成長が取り戻され、好影響が世界に波及しています。 第2に、ハイテク・半導体セクターが絶好調であることです。第4次産業革命系といわれる新しい需要もかなり出てきたので、構造的な需要増大ともいえますが、私は多少慎重に見たいと考えています。というのも、この分野は過去においても、その時々に構造的といわれた需要増加の影響も含めてアップダウンが激しいのが常だからです。 第3に、資源価格が緩やかに持ち直していることです。2014年後半から2016年初めまでの資源価格の下落局面が終わったことで、資源セクターへの投資も下げ止まり、金融市場へのリスクオンが戻ってきました。一方、資源価格が持ち直しているとはいっても、そのペースは緩やかなので、資源を消費する日本や欧州などの回復の障害にはなっていません。つまり、資源の供給側・需要側の両面から、資源価格がほどよい展開になっているのです。 一方、中国の債務残高がどんどん増えていることは大きな問題です。過去にバブル崩壊を起こした国と同じような上がり方をしていて、中国当局も今の好景気をどこかでもう少し減速させた方がいいと考えています。したがって、10月18日開幕の党大会の後、多少減速の方向に政策の舵が切られてくる可能性があり、その場合、減速度合いや世界経済への影響を注視する必要があります。 中国の動向は、資源価格にも影響を与えます。今や米国もシェールオイルやシェールガスでいっぱしの資源国ですので、原油価格が下落すれば米国の資源セクターにも影響が及びます。それから、資源価格が下がれば世界的に物価が下がる要因にもなりますし、資源セクターのデフォルトリスクが高まって、金融市場全般がリスクオフになる傾向もあります。中国自身を含め、新興国からの資本流出圧力も強まります。このように、中国経済の減速は、実体経済、物価、金融といった3つのチャネルすべてを通じて、世界経済に影響を及ぼす可能性があるのです。 そうなると、米国の連邦準備制度理事会(FRB)の利上げにも当然影響します。FRBが2015年から2016年末まで金利を上げるスピードが遅かったのは、中国経済が不安定だったことに起因する面が大きく、逆に2016年末以降、順調に利上げを進められたのは、元をただせば中国経済の好調が大きく影響したともいえるのです。 半導体セクターについても、今は設備投資がきわめて旺盛ですが、そうであるがゆえに、どこかで供給過剰に転じるリスクがあります。中国は産業構造の高度化に向け、国を挙げて半導体セクターの後押しをしており、多くの工場が2018〜2019年ごろに立ち上がりますが、そのころの半導体関連の世界的需給バランスはかなり不確実性が大きいと思います。 米国はインフレ率があまり上がっていないとはいえ、コアで1.5%に近いレベルではあるので、日本とは全く違う状況です。今年は12月にもう1回利上げがあるといわれていますが、私が注目している点は、FRBが考える米国の潜在成長率と政策金利の長期均衡値の両方が下がっていることです。このことは先進国全体の低金利傾向を表しているといえます。欧州も景気は順調ですが、物価はいまひとつ上がっていません。ただ、欧州もコアで1%強にはなっているので、やはり日本とは悩みの度合いが違います。 日本経済の動向 みずほ総研の見通しによると、日本経済は1%を超える成長が続きます。日本は消費が弱いとよくいわれますが、むしろ金融危機後、2013年度までの消費が高い水準にあったのです。この期間は政府がエコカー減税やエコポイントなどの施策をいろいろ打ち、消費が政策的に底上げされていました。 しかも、アベノミクス初年度の2013年度は株価が上がって資産効果も出て、デパートで高額品がたくさん売れました。消費増税前の駆け込み需要もありました。そういう高水準の消費が、2014年春の消費増税後に元のトレンドに戻っただけなので、政府・日銀も含めて多くの論者が消費増税を少し悪者にし過ぎていると感じています。むしろ消費税が3%も上がったのに、GDPと消費の長期的な関係は崩れていないのですから、消費は十分底堅いといえます。 そして、アベノミクスについては、日本銀行が行った金融政策の分についてはそれなりに効果があったけれども、成長を押し上げる「第三の矢」の部分が全く駄目だというのが一般的な評価ではないでしょうか。しかし、事実はむしろ正反対であり、成長の面での改善は明確だけれども物価の基調は変わっていない、というのが正しい評価です。 とくに人口動態を調整すればここ数年の経済成長は相当なものです。それなのに、なぜアベノミクスの効果が不十分だと批判されているかというと、目標が高過ぎたからです。「実質2%、名目3%」という非現実的な目標を掲げてしまったので、実質1%を少し超えるぐらいの成長では目標の半分ほどしか達成できていないことになってしまうのです。しかし、この目標をいったん忘れて事実だけを虚心坦懐に評価すれば、過去数年の日本経済はかなり良くなっています。 その上で、評価が一致しているのは雇用情勢が明確に改善したことです。一方、それなのに賃金が上がっていないとよく言われますが、これも本当に上がっていないのか、改めて冷静に事実を見る必要があります。 実は、よく報道されているのは1人当たりの賃金であり、これは高齢者や女性などの短時間労働者が増えている分、伸び率が低く出てしまうのです。そこで、時間当たり賃金で見ると、こちらも振れはあって足元は今ひとつなのですが、この2年程度を均せば1%前後の伸びとなっています。1%というのは、日本の時間当たり労働生産性上昇率とほぼ同じで、潜在成長率とも同じなので、「賃金は経済の実力に見合うぐらいは既に上がっている」と言ってもよいのです。しかも、足元の弱さは夏のボーナスが悪かった影響もあるので、そこは来年は回復するでしょうから、賃金は今後さらに伸びを高めていくと思います。 ただし、それでも物価は上がらないでしょう。生産性が上がれば賃金は上がりますが、物価はそうではないので、両者を分けて考える必要があるのです。そこで物価についてお話しすると、1990年代半ばからずっとゼロインフレで、それが文化・慣習のように社会に根付いています。アベノミクス開始後も平均0.6%ぐらいしか上がっておらず、しかもそのかなりの部分が一時的な円安要因です。さすがに50%も円安になればどんなに動かない物価もその時ぐらい少しは動く、しかしその円安効果が剥げればまたゼロインフレに戻る、という単純明快な変動が起きただけです。物価に関するレジームチェンジは、2013年以降も起きていないのです。 為替要因を調整した物価を使って、需給ギャップとの関係を表すフィリップス曲線を描いてみると、「デフレ」と言われた15年間とアベノミクスの期間で違いは認識できず、2%物価目標の実現に必要なフィリップス曲線全体の上方シフトは全く見られていません。それが突然、今後2年ぐらいで上方シフトする、という前提に立っているのが日銀の物価見通しですから、現実的ではありません。実際、日銀の物価見通しは、2年度先については必ず2%からスタートしますが、途中から下方修正され、年度の実績は1%に達したことすら1度もありません。2%目標は掲げ続けるが、その実現は展望できない、ということなので、現在の異次元緩和はいつまでも続くことになります。 長期金融緩和の副作用 おそらく日銀も緩和の長期化が避けられない可能性を感じたので、昨年9月に総括的検証を行い、金融緩和をいつまでも続けられる枠組みに切り替えたのだと思います。それはイールドカーブ・コントロールという枠組みです。これは、長短金利に目標を定めて緩和を行う枠組みであって、大量の国債買い入れを続ける必要はありません。買える国債の額にはいずれ限界が来ますが、長短金利を低く抑えることはいつまでもできるので、緩和を長く続けられるのです。ただし、長く緩和を続けた時に副作用はないのか、という論点は残ります。 1つ目は、出口において日銀に数十兆円の損失が発生する可能性があることです。しかも、緩和が長期化して日銀のバランスシートがさらに拡大すれば、その分、出口における損失も大きくなります。しかし、大きな損失が発生するのは、出口で短期間に金利を上げる場合です。FRBでさえ非常に時間をかけて上げているので、日本で一気に金利を上げなければならないような出口が訪れる可能性は極めて小さいと思います。 また、仮に数十兆円の損が出たとしても、日銀は中央銀行ですからつぶれません。確かに、日銀が累積損失を抱えると、その間は国庫にお金を納められなくなって財政負担が増えるという問題はありますが、その点は国民に説明すれば済むことです。金利を上げられるぐらい経済が良くなっているのだったら、税収の増加などさまざまなプラス面もあるでしょうから、日銀の損の部分だけでなくプラスの面も併せて説明すれば国民の理解は得られるでしょう。 2つ目は、財政規律が緩む可能性です。しかし、財政規律はあくまで政府の責任で確保すべきものであり、日銀の金融緩和のせいにするのは適当ではありません。 3つ目は、過大なリスクテイクが起こりうることです。ただし、これはどんな金融緩和にも付き物の問題なので、日銀はそういう目で金融市場や金融に関連するアクティビティをしっかり見ていけばよいと思います。 4つ目に、上場投資信託(ETF)の買い入れが株式市場を歪めることです。これは程度の問題なので、深刻な問題になっていないかどうか、日銀は市場関係者とよく議論して判断すればよいと思います。 私が一番大きな問題かもしれないと考えているのは5つ目で、低金利の長期化が金融部門や家計部門への悪影響を通じて、結果的に総需要を抑制する方向に働く、つまり金融緩和が逆効果になる可能性があることです。日銀もマイナス金利導入直後にその可能性を感じたからこそ、イールドカーブ・コントロールに切り替えて、長期金利が過度に低下しないようにした、という面もあるのです。しかし、今の金利水準でも、なお低すぎるリスクがあります。 この問題が非常に厄介なのは、今の経済学では分析が難しいという点です。今の経済学では、金利は低ければ低いほど総需要にプラスに働くというモデルが主流になっていて、実証分析もありません。私自身も、今の金利水準が低すぎるのかどうか、明確な答えは出せません。つまりこれは、日銀が悪い、誰が悪い、という問題ではなく、人類として知見を持ち合わせていない、という性格の問題なのです。ゆえに、日銀が結果的に判断を間違えるリスクを無視できないのです。 なお、日本は既に政府債務残高が非常に大きいので、財政規律がこれ以上緩むと国債が暴落して金利が跳ね上がる、と心配している人もいます。ただ、マクロ的な資金フローからみれば、それはやや心配し過ぎではないか、と私は思っています。 日本では、政府の多額の借金をも上回る膨大な民間余剰資金があり、その結果、国全体では世界に類を見ない巨額の対外純資産があるのです。お金が余ってしょうがない金融セクターから見れば、お金をたくさん借りてくれる政府はむしろ優良顧客と言っても良いぐらいであり、今後、少しでも金利が上がればその瞬間に国債を買いたいと思う投資家はいくらでもいます。こういうマクロの資金バランスから見れば、金利の暴騰は非常に考えにくいです。 日本経済の中長期的な姿 最後に、グローバルな視点を交えて、日本経済の中長期的な姿を推論してみたいと思います。先進国の成長率は、長期的に見て低下傾向にあります。日本はたまたま1990年代にバブル崩壊などが起きたので、「失われた20年」といわれますが、実は30年前と今の成長率を比べると、どの国もかなり低下している点では同じなのです。 確かに、近年の成長率を他国と比べても日本は相対的に低いです。しかしそれはもっぱら人口動態によるものです。実際、時間当たりの生産性上昇率をみると、日本はG7の中で高い方です。むしろ、米国と英国ではここ数年の生産性上昇率が極めて低くなっており、「生産性の謎」として大論争になっています。何らかのグローバルな要因が作用している可能性がありそうです。 さて、潜在成長率を高めるには、生産性上昇率を高めること、労働参加率を上げていくこと、の2つの側面があります。この点、アベノミクスのもとで労働参加率は上がっており、それによって就業者数が増えています。ただ、労働参加率の上昇は女性や高齢層によって実現されているので、平均労働時間は減っています。働き方改革も、働く時間を減らして働ける人を増やす取り組みですから、「人数×時間」で測った労働投入量を増やすことには、どうしても限界があるのです。 したがって、日本が今後、潜在成長率を上げていくためには、結局のところ、時間当たり生産性上昇率を上げるしかないのです。しかし、それが既に先進国中で最高なのですから、同じグローバル環境の中で、日本だけが他国をさらに引き離して高い生産性上昇率を実現していけるのか、あまり楽観的に考えない方がいいと思います。 以上のことを踏まえて将来の人口動態を見ると、生産年齢人口はマイナス1%以上のペースで減っていきます。そうすると、生産性を1.5〜2%のペースで上げていかないと、今の1%程度の潜在成長率も維持できません。つまり、成長戦略が相当うまくいった場合でも、長期的な日本の潜在成長率は1%ぐらいが精々です。0%近くまで落ちてしまう可能性も否定できないのです。 金利へのインプリケーションとしては、日本が長期的に実現できそうな実質成長率が1%程度で、ゼロインフレも簡単に変わらないとすると、長期的な名目成長率は1%になります。近年、先進国は大体、名目成長率に比べて長期金利(10年国債)の方が低い傾向が続いています。中央銀行が国債を買っているからという面もありますが、他にもいろいろな要因もあり、おそらくこの関係は定常化していくでしょう。そうすると、名目成長率が1%の日本では、長期金利は、たとえ日銀が金融緩和をやめても、0%台が普通の状態になっていきます。 もちろん、これはあくまでも国債のような安全資産についての話であり、エクイティやクレジットなどのリスクマネーには今でも相応のリターンがつきます。何らかのリスクを取って資産を効果的に運用するという点では、日本はむしろ潜在的な機会を活かしきれていないと思われるので、低金利環境の下でも今後のチャンスは大いにあるのではないでしょうか。 まとめ 人口動態、グローバル要因、ゼロインフレの慣性を考えると、日本経済の長期的な成長率は実質も名目も1%ぐらいと考えておくべきであり、それを前提に財政や社会保障の持続性が確保できるようにすべきだと思います。仮に長期的な成長率をもっと高くできたら、それはボーナスとして享受すればよいのであって、最初から実質2%成長を前提に政策や制度設計を考えると無理が生じます。最近出た「国民生活に関する世論調査」によると、今の生活に対する満足度は過去最高なのです。ですから、1%成長でも十分に人々が充実感を持って暮らせる国をつくれるはずです。 物価については、インフレがゼロのままでもほとんど実害はありません。むしろ、ゼロインフレを「デフレ」などと呼んで、日本経済が良くならない理由であるかのように語ることの方が問題です。もちろん、現在の経済学では、2%ぐらいのインフレがあった方が良いという考え方になっているので、日銀は引き続き、副作用が生じない限り、2%インフレを目指せばよいと思います。ただ、2%インフレが実現できなくても、たいして問題はない、ということです。 質疑応答 Q: 時間当たり生産性の模範とすべきは、フィンテックなども盛んになっている中国ではないかという気もしているのですが、ご見解を伺いたいと思います。 A: 先進国と新興国の生産性上昇率を比べるのは適当ではありません。もともとの水準が異なるので、グローバル化に伴う所得均等化の力が、新興国の生産性上昇率を引き上げ、先進国の生産性上昇率を抑制する、という方向に働く面があるからです。もちろん、この点は色々な議論がありますが、先進国がいくら新しい技術を生み出しても、それを国全体の所得増加につなげることが難しくなってきている要因の1つとして、新興国との競争があることは否めないように思います。もちろん、新興国がキャッチアップできないスピードで先進国の労働者の能力がどんどん高まっていけばよいのですが、人間が変われるスピードにはおのずから限界があります。日本の高度成長期も、米欧へのキャッチアップや教育水準の急速な高度化という要素があったからこそ高い生産性上昇率を実現できたのです。先頭集団に入ってしまえばそれはもう無理です。政府は「人づくり革命」「生産性革命」と言っていますが、まさに「革命」というぐらいの変化を起こさないと、中国のような国と競争しながら生産性上昇率を高めていくことは難しい、それが先進国の置かれているグローバル環境だと思います。 もう1つ、生産性というと、ハイテクの活用などによる効率性の追求を連想しがちですが、実は、生産性を上げるのに一番手っ取り早い方法は無駄使いです。実現した収益・所得を労働投入量で割ったものが生産性ですから、安い焼き鳥チェーンで飲むのではなく高級バーで大金を使えば飲食業の生産性は上がりますし、政府も競争入札などしないでたっぷりマージンの乗った公共事業を発注すれば建設業の生産性は上がるのです。ただ、これはバブルや借金の増加を伴うので、長期には続けられません。先進国はどこも既に政府の借金が多くなってしまっていて、無駄使いできない、むしろ節約していかなければならない状況です。これも生産性を上げにくい一因だと思います。 Q: 先進国の財政赤字は適度なインフレで毎年ある程度減価していくのが望ましいという議論があって、それもインフレ率2%が必要という論拠の1つになっていると思うのですが、いかがでしょうか。 A: インフレ2%目標は、政府債務を減らすためだと言う人もいますが、私はそれは的外れだと考えています。インフレ率が上がれば、政府の支出も増えますし利払いも増えます。政府債務をインフレで消せるのは、支出や利払いの増加が追いつかないようなハイパーインフレの場合だけです。しかし、そんなことは誰も望まないでしょう。加えて、金融緩和でハイパーインフレを起こそうと思ってもできません。ハイパーインフレが起きるのは、物不足のときだけです。大災害や戦争になればそういうこともあるかもしれませんが、それはなおさら誰も望まないことです。 Q: 今のイールドカーブは低すぎるのではないでしょうか。普通に銀行経営が成り立つようなイールドカーブとは、どういうものでしょうか。 A: 日銀はあくまで2%物価目標を達成するためイールドカーブ・コントロールを行っています。その観点から、日銀は今のイールドカーブが、日本経済全体にとって最もプラス効果が大きいと考えているのだと思います。ただ、これは先ほど述べたように、本当に最適なのかどうか、現在の経済学には十分な知見が無いだけに、判断が難しい問題です。また、近年の銀行利鞘の低下傾向について、日銀では、マイナス金利政策の影響というよりは、オーバー・バンキングによる構造的な問題の側面が大きいと考えているようです。 Q: 日本の金融機能をどう評価されますか。 A: 少なくとも金融庁が、「日本型金融排除」が存在しているのではないか、という問題意識を持っていることは確かです。近年、クラウドファンディングが話題になっていることからも、これまで掘り起こせていなかった資金需要は相応にあるのではないか、と私も思っています。クラウドファンディング以外でも、家計など最終的な資金の出し手が何らかのリスクを分担する形で、エクイティ性資金の流れがより円滑になれば、銀行にとっても都合がいいわけです。預金が原資の銀行にとって、単独で取れるリスクには限界がありますが、別途リスクマネーのチャネルが拡大すれば、それとの組み合わせならもっとデットを供給できる、という余地が広がるはずです。 Q: マクロ経済運営の観点から、格差問題をどう捉えて、政府はどう対応していけばいいとお考えですか。 A: 成長はインクルーシブでなければ持続しない、中間層の賃金が全然上がらず富裕層だけもうかる構造には持続性がない、という意識が国際的にも相当出てきています。私はそれに非常にシンパシーを感じていて、生産性もこの問題とかなりリンクしているのではないかと思っています。いかなるイノベーションも、厚い中間層によって支えられる購買力があって初めて、大きな市場価値を生むことが可能になるからです。 その意味では、アベノミクスが途中から「成長と分配の好循環」を掲げるようになったことは、政治的な戦略としてだけでなく、経済的にも正しいアプローチだと思います。ただし、繰り返しになりますが、それで生産性上昇率を劇的に高めることができるかどうかはわかりません。先進国はどこも、新興国との競争や、既に一定の生活水準に到達していることなど、成長を高めにくい構造的な要因に直面しています。むしろ、分配面も十分考えながら成長戦略を推し進める努力を続けていかないと、今の成長率を維持することすら難しい、そういう目線で成長の問題を考えていくことが重要だと思います。 この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。 イベント シンポジウム ワークショップ BBLセミナー 2024年度 2023年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度 2015年度 2014年度 2013年度 2012年度 2011年度 2010年度 2009年度 2008年度 2007年度 2006年度 2005年度 2004年度 2003年度 2002年度 2001年度 終了したセミナーシリーズ 情報発信 ニュースレター 更新情報RSS配信 Facebook X YouTube 研究テーマ プログラム (2024-2028年度) プログラム (2020-2023年度) プログラム (2016-2019年度) プログラム (2011-2015年度) 政策研究領域 (2006-2010年度) 経済産業省共同プロジェクト プロジェクトコンテンツ 調査 フェロー(研究員) 論文 ディスカッション・ペーパー(日本語) ディスカッション・ペーパー(英語) ポリシー・ディスカッション・ペーパー(日本語) ポリシー・ディスカッション・ペーパー(英語) テクニカル・ペーパー(日本語) 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